中谷巌さんが名古屋で講演をされるというので、日程をやりくりして参加いたしました。題して「世界大不況をどう生き抜くか」。

中谷巌さんといえば、小渕内閣の「経済政策会議」の議長代理など政府の委員を歴任し、1990年代には政策決定に大きな影響を与えた経済学者さんなのに、昨年、著書『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』(集英社インターンナショナル)で新自由主義市場原理主義との決別を表明し、巷をあっと言わせた方です。

また、三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長でもあり、私は同社の前身の前身ともいえる東海総合研究所に勤務していたので、中谷さんには一方的に親しみを抱いているのです。

講演会は、経済・経営のエピソードをヨコ糸に織り込みつつ、哲学的なお話がタテ糸にとおった、想い深まるものでした。日本人として、日本のよき文化、よき習慣、よき在り方をもう一度、見つめなおしてみようと痛感しました。

中谷さんによれば・・・

○日本はこのところ欧米流の”戦略論”を取り入れ続けてきたものの、そろそろ日本固有の哲学を取り戻すべき時がきている。

○たとえば、レイオフでも欧米は侵略の歴史、階級社会がベースにあるので、上はドライに下を切れるし、下は下でそんなもの・・・と諦めている。けれ ども、日本は弥生時代から譲り合いながら融和して暮らしてきたので、会社はみんなでがんばって伸ばすものという考え方がある。レイオフの痛みの感じ方が大 きく違う。

○そもそも欧米と日本では、組織と個人の関係が違うので、レイオフをはじめとする欧米型の流儀では社員は動かない。

○つまり、欧米流の戦略論ではこの大不況はとても乗り切れない。むしろ、組織の一体感を損なわないことが大切だ。

○控え目で口べたで、欧米人に比べてプレゼンが下手な日本人。けれども、それでいいい! IR(インベスターリレーションズ)のプレゼンよりも本当にいいものを作っていたら、いいものは評価される。

○数年前にBBC(英国放送協会)のアンケートによれば、日本は世界によい影響を与える国 No.1である。欧米文化もよいが、日本文化のよさを認識して、われわれは自信をもつべきだ。

○日本の12000年の歴史をふりかえれば、世界不況などメではない(ほぼ絶叫!)

言って見れば「日本人のDNAに自信を持とうぜっ!」というお呼びかけ。熱のこもったメッセージに余韻が残りました。

我が国に生まれたからには、望んでも望まなくても、我が国のDNAを受け継いでいるわけです。私は基本的には日本に生まれてよかった、日本人でよかったと思っているものの、それは何故?ってことをきちんと考えたことがありませんでした。この機会に考えてみようと思いました。

また、たくさんの働く人々と関わる仕事をしていた皮膚感覚からすると、中谷さんのおっしゃるようなDNAが本当に継承しているのか、いけるのか、少し心配にも感じます。

日本に階級制度はありませんが、その代りに会社という階層組織があたかも階級社会のような世界を生み出していて、その中では僕(しもべ)を使う貴族のように、貴族に従う僕(しもべ)のように感じたり考えたり動いたりしている人も多いように見えます。

だからこそ、中谷さんも融和の文化、性善説の文化を取り戻そうと提案されているに違いありません。若い人たちの無気力にも見える姿は、私たち社会人の先輩たちがつくりあげた功利主義、性悪説に基づく世界に愛想をつかしているからかもしれません。

時代のキーワードになっている「ダイバーシティ」ですが、互いに多様性を認め合うためには、それぞれが自分らしさを真に愛することが欠かせません。自分を愛せない人には、人を愛したり大切にはできないからです。

日本人として生まれた自分を愛するために、もっと日本のことを知りたくなった中谷さんの講演会でした。

資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言
中谷 巌
集英社
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One Response to “世界大不況をどう生き抜くか ~中谷巌氏講演に参加して~”

  1. 眠りのペーシング

    世界不況をどう生き抜くか!
    というテーマで開催された講演会
    http://sonoma.ne.jp/2009/04/08/drnakatani/

    お神酒どっくりの仲良しさんはやる為すことがそっくり!
    言葉も声も動きもペースが…

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