即興劇プレイバックシアターの創始者ジョナサン・フォックスさんが来日し、「ソーシャルチェンジ」のワークショップが開催されたので参加いたしました。

ソーシャルチェンジというコンセプトはジョナさんから教えていただき、今や、プレイバックシアターをとおして平和的友好的に社会を変える活動を継続するというのは、私のライフワークともいえるテーマになっています。

プレイバックシアターはある人のストーリーを聴き、演じる行為です。人は語ることによって、カタルシスを得、癒しや気づきや勇気を得たりします。

プレイバックシアターをとおして、ストーリーが語られるということは、人の心が癒され、鎮められ、人が猛々しい行為に及ぶのを防ぐのではないか。ひいては、社会に平和がもたらされるのではないか…と信じて、私はプレイバックシアターを学び、演じ続けています。

Acts of Service

けれども、プレイバックシアターをとおしてソーシャルチェンジをめざすのはハチドリのひとしずく、小鳥が山火事を消そうと、くちばしの水をポトリポトリと落とすようなものです。それでも、なぜ、プレイバックシアターを続けているのか? ワークショップの3日間、私はずっと、そのことを考えていました。

私は1歳の時、従姉の無邪気な暴力によるショックから脱水症状を起こし、危篤に陥りました。母が弟を出産するために入院している最中のこと。母がいない不安に加え、従姉の乱暴なふるまい。私は覚えていないのですが、おそらく、無意識の闇に暴力に対する恐怖が刷り込まれたものと思います。

そのせいか、小学校の低学年の頃、TV番組「コンバット」で銃撃の音が始まると、ふるえながら布団の奥深くに隠れ、眠りを急ぎました。いまでも、戦闘シーン、決闘シーンでは自分が殺されるかのような恐怖を感じます。

戦争体験もなく、身近に戦没家族もいないのに、平和活動に興味があるのは私の無意識に隠された恐怖が、暴力への強い嫌悪を訴えているからだと思います。

プレイバックシアターがソーシャルチェンジをめざす活動であることを知った時、私は劇団を創ろうと決め、2005年に名古屋プレイバックシアターを結成しました。そして、飽くことなく、プレイバックシアターの活動を続けています。それはもしかしたら、暴力におびえる自分を癒すためなのかもしれません。

私たちが死んでも、ストーリーは残る。

動機がどうであれ、プレイバックシアターをとおしてストーリーを聴くことは、人々と丁寧に関わりながら、語られる個人的なストーリーに在る普遍的なメッセージに耳を傾ける行為です。

人が語ったストーリーは語られた瞬間にテキストとして、語り手から離れ、聴き手によって語り継がれ、語り継がれることで物語となり神話となり、独立した存在として生き始めるのです。

世界中に、語り継がれることを待っているストーリーが在る。

そうしたストーリーに出逢うために、私はこれからも山火事にポトリポトリ、ひとしずくの水を落とすかのようにプレイバックシアターを学び、演じ続けていくでしょう。

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