2/6の愛知県知事選挙、名古屋市長選挙において
大村ひであき、河村たかしの両氏が圧勝で当選しました。

民主王国と呼ばれる愛知の民意を探る選挙としても注目され
結果は、民主党推薦の御薗慎一郎氏が大村氏の得票数の1/3以下
自民党推薦の重徳和彦氏の得票数を下回るという、民主惨敗でした。

大村氏は元自民党衆議院議員、河村氏は元民主党衆議院議員。

おふたりともがTVというメディアを武器に、知名度を高め
中央政党を離党をして、地域政党を設立し、地域から日本を変えると訴えて
今回選挙にのぞむ…という、キャリア戦略を展開してきました。

この度の圧勝は、おふたりのキャリア戦略=選挙戦略の勝利であり
既成政党の無力さに憂え、地域政党に多少の期待を抱き始めた
市民たち(citizens)の民意の結果といえるでしょう。

懸念されるのは、おふたりの公約が「減税」にあることです。
というのも、愛知県、名古屋市の財政の厳しさはひととおりではありません。

地元でNPOを主宰し、県政、市政に何かしら関わってきた者として
その厳しさは肌身で感じ続けています。

愛知県では行政改革委員会委員として、財政健全化への議論にも加わり
事業仕訳を含め、コスト削減の努力もそれなりに見てきました。

愛知県庁内には、行革疲れという言葉が生まれているほどです。

民間の感覚からは、「まだまだ甘い!」と言いたいところも多々ありますが
人づくりのプロという立場から、現在の風土、組織、コンピテンシーをふまえると
これが手綱の限界だろうと感じ、それなりの努力に敬意も払いました。

つまり、減税とセットとなるのはコストダウンと増収ですが
これ以上のコストダウンは、現場のさらなる疲弊と抵抗を招くリスクがあります。

そこで、増収政策に期待するのが、組織活性化の点からも妥当でしょう。

大村、河村両氏は、昨年11/13のasahi.com記事によると
「目指すはシンガポールとか上海とか(経済的に繁栄した都市だ)」
「県民税減税を絡めた経済振興策を打ち出す。『楽市楽座』だ」と語ったとのこと。

ものづくり企業がすでに構築しているアジアとのパイプをビバレッジにして
国際社会との流動性を促し、増収政策を打ち出すのでしょうか。

おふたりが選挙で掲げた政策は、十分に魅力的です。
特に「楽市楽座構想」には、増収政策としての効果を期待しています。

それは、新しい首長たちのリーダーシップへの期待でもあります。

私は政治的には中立、無党派ですし、政策にも疎いものの
市民(citizen)としてのみならず、人づくりの専門家として
県政、市政を見つめながら、仕組みだけでは人は動かない
人を動かしてこその政治、行政という現実に
新しいリーダーたちが、いかに取り組んでいくかを楽しみにしています。

行政に携わる人々も市民たち(citizens)も、現場はいま、疲れています。
一生懸命に働いても、報われない徒労感が広がっているからです。

そして、現状を打破するには、私利私欲の微塵もない
無私のリーダーが必要であると、人々は意識、無意識に気づき始めています。

『龍馬伝』『坂の上の雲』が愛されるのは、社会の意識の顕われだと思うのです。

煮詰まり具合でいえば沸点を越えている、言ってみれば危機的状況のもとで
フォロワーを鼓舞し、モティベーションを保ち、高めていくには
これまで以上に強く、温かいリーダーシップが不可欠です。

余談ではありますが、中央政党は与野党ともに政策以前に
リーダーが不在であることが問題、と思っています。

ですから、大村新知事が立ち上げた「日本一愛知の会」
河村新市長の「減税日本」が単なる地域政党、首長政党としてのみならず
日本のど真ん中の愛知から日本を変える、「平成の維新」を行うという
ヴィジョンの実現にあたっては、首長の「もっているもの」が問われるでしょう。

それは、首長としての無私の志であり
本物のリーダーとしての「リアリティ(実像)」です。

本日2/8の中日新聞朝刊には、次のような記事が掲載されました。
『蜜月「いつまで」 大村・河村流の行方(上)』という見出しです。

<これまでも多くの人間が河村に近づき、去っていた。
ブレーンの一人だった名古屋大大学院教授の後房雄は
政治手法をめぐる違いでたもとを分かち
民間出身から鳴り物入りで副市長に迎え入れた
大西聰(さとし)も7日、職を去った。
河村は最近、周囲にこう漏らした。
「大村も知事になったら離れていくのかなあ」>

自らが暮らす街、関わる街の首長になられたおふたりには
地域主権という挑戦がセクショナリズムに陥らないよう
地域内外つまり日本全体、国際社会全体との共生をめざされますよう
正義の秤を胸に、市井の人々への慈しみの目をもって
リーダーとしてのリアリティを発揮されるよう、願っています。

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