HRDM研究会のセミナー「教育効果測定の基本を理解する~研修の教育効果の測り方」に参加しました。
講師は同研究会代表 堤 宇一さん、「はじめての教育効果測定―教育研修の質を高めるために」の著者として知られる方です。共著者の久保田享さんが私たちNPO法人キャリアデザインフォーラムのメンバーなので、堤さんの輪読会を名古屋で共催させていただいたというご縁があります。
教育(研修)の効果測定が必要、重要であるとは知りながら、何をどう測るのかは悩ましいところです。堤さんのセミナーでは「教育効果とは何か」という知的理解からスタートし、「なぜ、教育効果測定を実施するのか?」という実践的な命題を考え、実施のために必要な知識と手順を学び、演習をとおして「効果測定実施 概要設計」を体験しました。
そのゴールは、教育効果を4つのレベルで分類できるようになること。3グループに分かれ、2つの概要設計を行いましたが、各グループとも堤さんに教えていただいた知識と手順をふまえた概要設計がおおよそできるようになりました。
素晴らしい! 講師の手腕があればこその教育効果です。
さて、堤さんが用いた4つの教育効果の測定レベルとは、カークパトリックモデルと呼ばれるもので、1.リアクション…参加者の反応の測定 2.ラーニング…参加者の知識・スキルの習得状態を測定 3.ビヘイビア…参加者の学習内容の活用状況を測定 4.リザルツ…参加者の行動変容によって得られた組織貢献度を測定という4レベルでした。
たいへん印象深かったのは、堤さんが提示された回答例の手堅さでした。たとえば、会社トップがレベル4を期待していたとしても、諸条件をふまえ、育成担当者がめざすべきはレベル3の必達である…という合理的判断を行うというスタンスです。
確かに、予算、期間、人的資源、物的資源、手法の選択などなど、様々な諸条件にてらして、どこまでの教育効果をあげられるかを現実的に推し量り、保証し得る範囲でレベル設定を行って、学習目標を定め、その必達を精緻にくみ上げなければ、中途半端なプランになるのは明らかです。
こうした判断はベテランの実務家なら、リスク対策(クレーム予防)として必ず行っているでしょう。けれども、心のどこかで「上司、クライアントから教育効果があがっていないと責任転嫁されないように…」と責任回避をしているのではないか…とやましく感じていたのは私だけでしょうか。
堤さんの教育効果レベル設定のスタンスからは科学と理論に裏打ちされた自信、強さが感じられ、責任回避ではなく、むしろ専門家としての責任を果たしたいからこその戦略であることを学びました。
セミナーのコンテンツについては、堤さんの著書で知ることができます。人材育成に真面目に取り組んでいる教育(研修)の専門家にはぜひ一読いただきたいと切に思います。
日科技連出版社
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