若年者地域連携支援事業(厚生労働省)「キャリア教育推進フォーラム(愛知県)」の分科会を担当いたしました。

【分科会 1】
テーマ:『キャリア教育の基本 ~三角のおにぎりからはじめよう!~』
日時:2009年6月29日 15:20~16:40
会場:愛知県総合教育センター(東郷町)
主催:愛知県教育委員会・愛知県雇用開発協会

「キャリア教育推進フォーラム」は、文部科学省が平成16年に全国2か所で初めて開催され、その後、毎年各地で開催されています。その目的は、社会全体でキャリア教育を推進していこうとする気運を高めて、キャリア教育の意義を普及・啓発すること、キャリア教育の方向性をわかりやすく提示して、キャリア教育を一層推進することと説明されています(文部科学省ホームページ)。

●キャリア教育とは

キャリア教育とは「子供たちが仕事をとおして社会に適応し、自分らしい人生を実現できる人材へと育つよう支援する教育」といえます。

平成15年、若者自立・挑戦戦略会議(文部科学省、厚生労働省、経済産業省)による「若者自立・挑戦プラン」がとりまとめられてから、様々なキャリア教育施策が進められており、家庭、学校、産業界に対して様々な努力が奨励されています。

詳しくは「若者自立・挑戦のためのアクションプラン」についてをご覧ください。同会議の発足から各省庁の取り組みについて知ることができます。

「7つの力」を育てるキャリア教育―小学校から中学・高校まで

●キャリア教育を進めるために

「キャリア教育」という言葉を文部科学書がはじめて使ったのは平成11年であり、これが推進されるようになったのは、ニートやフリーターの増加や就職後の早期離職など、「学校から職業への移行」が深刻な課題ととらえれるようになったからです。

詳しくは、「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書(ダウンロード版)」をご覧ください。この報告書には「職業観・学習観を育むプログラムの枠組み」も掲載されています。これは、学校におけるキャリア教育の取り組みのガイドラインとも位置づけられる枠組みです。

●従来型キャリア教育の破たん

かつては、家庭と学校と産業界それぞれが役割分担して、若い世代のキャリア教育をなんとなく担ってきました。幼児、小児には家庭が社会的なマナー(生活様式あるいは常識)を躾け、青少年には学校が学力向上とともに社会適応の資質を養い、産業界が社会人としての様式や常識を教えながら、それぞれの業務に必要な教育を施し・・・というような役割分担です。

今や、こうした役割分担が機能しなくなっていることは明らかです。産業人として若い世代と接しますと、家庭や学校での教育訓練の「積み残し」を感じざるをえません。さらに、産業界も激化する経営環境に対応することを優先していますから、若い世代の「積み残し」をカバーするほどのOJT(上司・先輩による職場訓練)を施してはいません。

つまるところ、キャリア教育は家庭、学校、産業界でなんとなく行われてきたものの、そうした従来型キャリア教育が機能しなくなり、制度的組織的にその見直しが行われている最中といえるでしょう。

●学校の先生たちはお気の毒?

新しい形のキャリア教育が必要であることは言うまでもないものの、「キャリア教育推進フォーラム」での先生たちのお姿は、なんとなくお気の毒に見えました。

と言いますのも、このところは生徒さんの学力低下も叫ばれていて、おそらく学務もお忙しいはずです。部活などの課外活動のお世話もあるかと思います。そこへもってきて、キャリア教育推進フォーラムのような研修に参加したり、インターンシップのお世話をしたり、キャリアカウンセリングを学んだりしていらっしゃるご様子・・・。

先生のためのキャリア・カウンセリング事例集―導入に向けての基礎の基礎

まして、産業界にいらっしゃらない学校の先生たちにとって、就業環境が激化しているとか、若い世代の社会人基礎力が低下しているとかいうことは「バーチャル」なイメージはできても、実感の伴うご理解は難しいように思えます。

現に、職業高校の先生や短期大学の先生から「この子ならという子が採用されず、どうしてこの子がという子が採用される」というお話をよく聞きます。教育界と産業界の人材に対する価値観が異なっていることの顕われです。

●なぜ、おにぎりが三角に握れないのか

お伺いしている某社の新入社員研修は無人島で行われます。研修施設はあるものの不足だらけの施設で、プレゼンのトレーニングの他には食事を作ったり、掃除をしたり、生活力を鍛えるような研修です。

毎年、この研修に同行する度に、新入社員たちの日常の知恵の拙さに驚きます。雑巾がけができない、白菜が切れない、おにぎりが三角にむすべない・・・。

考えたり、やってみたり、やり直してみたり、先人のマネをしてみたり、失敗したり、失敗から学んだり・・・。人々が知らず知らずのうちに取り入れてきた学ぶための方法を若い人たちは学んでいないようです。

●学ぶ力を育てる教育

学び方を学ぶことをメタ学習といいますが、メタ学習をしていれば、新しいことを学ぶのはとてもスムースです。キャリア教育が自分らしい人生を実現する力を育てる教育であるならば、私たち大人が子供たちに教えたいことのひとつは学び方ではないでしょうか。

それは難しいメタ認知の理論を学ばなくても、経験則から簡単に行うことができます。たとえば、身近な子供たちに「上手な人の真似をしてご覧」とか「失敗しても大丈夫」「失敗から学ぼう」とか、「教科書は3回読もう」「3回読めば記憶が定着する」とか、そんなことを教えるということです。そして、子供たちにをよく観察し、上手くできたらほめる、上手くいかない時には励ましたり叱ったりするということです。

学校の先生たちであれば、生徒との日常において、そうしたことをするのは得意そうです。インターンシップやキャリアカウンセリングのような仕組みとしての指導のみならず、そうした日常の取組みの蓄積が子どもたち、若い人たちの学ぶ力を伸ばし、引出し、自ら学ぶ姿勢と方法を身につけていけるのではないでしょうか。

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