『遠野物語』発刊100周年の記念イベントが
静かに繰り広げられている岩手県 遠野に出張いたしました

遠野駅に降り立つと、古いおひなさまのお出迎え…

毎年開催されている遠野町屋のひなまつりも今年は
記念イベントのひとつとして、開催されています

城下町遠野の町家で、代々大切に受け継がれてきた
おひなさまを、2/25(金)~3/3(木)
遠野駅周辺の商店街を中心に一般公開します
3/4(金)には親水公園で、流しひなも行われます

仕事が終わって、宿泊先の たかむろ水光園
こちらは、水と光を活用したローカル省エネルギー施設です

園内には、3人の天女が泊まったという夢見堂やら、酒蔵やら
素敵な施設がありますが、夜の到着、早朝の出発に加えて
庭園が雪におおわれていて、見学はかないませんでした

夕食では、生まれてはじめて!
語り部さんのナラティブ(物語文学かつ語り口)を味わいました

遠野のことばは聞き取れなくて、細かいところは分かりませんでした
けれども、語り部さんの身ぶり、手ぶりをまじえた”行間”から
物語のストーリーもエッセンスも十分に伝わってきました

4つの物語が語られ、最初に語られた「おしら様」伝説に心が動きました
人の心の”元型”を表しているような、ゾクゾクする世界…

おしら様とは、東北地方で信仰されている神様のことで
蚕の神様、馬の神様、農業の神様といわれています

ご神体は30センチくらいの桑の木の先に、男女の顔や馬の顔を彫って
布を多数重ねて着せて、普段は、神棚や床の間にまつっているそうです

おしら様が神様になったいきさつは、語り部さんによると次のとおりです

むかしむかし、美しい娘と馬が恋に落ちました
これをはばむために、娘の父親は馬を桑の木につるして殺し
首を切り落として、皮をはいでしまいます

娘が遺体にすがって泣いていると、不思議や不思議
馬の皮が娘をくるんで、天へとのぼっていきました

やがて、娘は親子孝行をし残したと言って、父母の夢枕に立ち
あるお告げを遺します

それは、3/15、馬の顔をした虫が表れるので
馬をつるした桑の木の葉を与え育て、糸をつむぎなさいというものでした

3/15、お告げどおりに納屋のウスの中に、たくさんの虫がわいています
桑の葉を与えると、さなぎへと育ち、マユ玉から絹糸をつむいで売って
父母はお金持ちになりました。。。どんとはれ

というのが、語り部さんが語ってくれた、おしら様のナラティブです
口承ですので、語る人によって、少しづつ物語は違うようです

遠野物語 (集英社文庫)

おしら様伝説は、養蚕のはじまりを伝えると言われています

出張をご一緒した国学院大学の小松光一先生によると
縄文文化と弥生文化の融合を表しているそうです

縄文時代には、人も動物と結婚するほど「自由だった」とか

弥生になると、人はあれこれを道具を使うようになり
衣類も普及して、動物との交わりはなくなったというのです
なるほど…

ともあれ、私の父の母方はタネやさん(蚕の養殖業)
母の実家は糸やさん(絹の製糸業)
私は現在、アパレルブランドの立ち上げ準備の最中で
おしら様伝説との出会いに、いろいろな意味で、ぞくぞくです

翌朝、遠野伝承園を訪ねたら、御蚕神(おしら)堂
千体を超えるおしら様!

思わず、アパレルブランドの成功を祈願してしまいました

2010年4月24日(土)、おそらくは『遠野物語』発刊100年を機に
リニューアルされた遠野市立美術館にも立ち寄りました

1/15(土)~3/13(日)まで、第59回特別として
「遠野、この郷の記憶 ~写真家・浦田穂一の世界~」が開催中でした

遠野に移り住んで、遠野を撮り続けた写真家 浦田穂一さん
昭和40~50年代の遠野の暮らし…

厳しい自然に立ち向かうのではなく、折り合うように
季節を見つめながら、祈りながら暮らす人々の
丁寧な生き方、暮らし方に、胸が熱くなりました

自殺者が3万人を超えるようになって、ついに連続13年
自ら命を絶つ方の数では、岩手県が全国で最多とか…

意外なことに、積雪の少ない遠野ですが
今年は、数十年ぶりの大雪です

車窓から見える一面の雪景色に
東北の冬の厳しさを垣間見る想いでした

自然を祀り、祈る暮らしに後ろ髪をひかれながら
祈りに頼らない街へ戻ってきた私…

日本人のナラティブは、いったい、どちらへと続くのでしょう

Tags: , , , ,

トラックバックURL

コメント

コメント欄では次のタグが使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>