ゴールデンウィークに入り、ボランティアとして
被災地に入る方々が多いと報道されています。

震災発生後まもなくのこと
心から信頼する友人 クニちゃんこと橋本邦彦さんから
「支援者用注意事項一覧」が届きました。

いつか、社会に広く、ご紹介したいと考えていました。
はじめて、被災地ボランティアをされる方も多いと思いますので
この機会にぜひ、ご紹介させていただきます。

Japan Tsunami Grief Support Project (JTGSプロジェクト)が作成し
A4 1枚に、次の2つの視点から注意事項が記述されています。

・しないほうがよいこと
・気をつけて欲しいこと

メンバーの井上ウィマラさんは、高野山大学でスピリチュアルケアなどを
研究されていて、橋本さんの頼もしい仲間とのことです。

クニちゃんからのメールには、次のようなメッセージがありました。

 彼が作成にコミットした添付の支援者用注意事項は
 大切な「注意」であると思います。
 日常の対人関係においても同じく役立つと思いますのでシェアいたします。

支援者はよくよく気をつけないと、善意からとはいえ
ついつい、余計なお世話をやいてしまったり
「してあげる」という気持ちがわき出て、知らず知らずのうちに
上の立場にいるような錯覚に、陥ることがあります。

私も講師として、カウンセラーとして、ハッと気づくと
大きなお世話をやいていたり、よかれと思ってのことではありますが
相手の望まない支援を、強くお奨めしていることがあります。

「お手伝いをさせてくださり、ありがとうございます」という気持ちを忘れず
自分が何をして欲しいかではなく、おひとりおひとりが何をして欲しいかを
丁寧にお尋ねしたり、慮ったりしながら、支援をしたいものです。

——————————————-

被災地の外部から被災者を支援する皆様へ(原文)

被災者の方、そして支援者の方のこころの安全を守るため
以下のご配慮をお願いいたします。

しないほうが良いこと・・

・被災した人を弱者として「~してあげる」「かわいそうに」といった
 態度や話し方をしないで下さい。相手の自尊心を傷つけることになります。
 また「頑張って」と安易に励ますことも控えましょう。
 どう頑張れば良いのかもわからない時があります。
 「頑張って」や「頑張ろう」という言葉は、何と言えばよいのかわからない時に
 自然と出てくる言葉ですが、できるだけ使わないようにしましょう。

・体験を詳細に聞くことは控えましょう。
 また、被災者が体験していることや心情を、憶測で決めつけてしまわないように
 して下さい。実際、ほとんどのことが、当事者でなければわからないことです。

・その人が、被災体験について話をしているときに、
 話題を変えないようにしましょう。

・ 「あなたのお気持ちがわかります」と言ったり、相手が聞いていないのに、
 あなた自身の体験を話さないようにしましょう。たとえあなたが同じような被災や
 死別の体験をしていたとしても、今は、その人の体験や感情が重要なのです。

・「時間が癒してくれますよ」、「何か他のことを考えるようにしたら」、
 「神のおぼしめしです」といった言葉で、
 心の痛みを落ち着かせようとしないで下さい。
 たとえ善意から出た言葉であったとしても、悲しみが強い時には、
 そのような言葉は助けにならず、余計に傷つけてしまう場合もあります。

・求められていない時に、アドバイスをするのは避けてください

・ 守りきれない手助けを、約束しないで下さい。
 不確かな情報も、提供しないように気をつけて下さい。

・ 一定期間が経てば悲しみを克服できると考えないで下さい。
 悲しむことは、通常、人々が予想しているよりもずっと長く続くものです。

気をつけてほしいこと・・

・ 話を聞くときは、その人が何を望み、何を伝えたいのかに焦点をあて
 今できる支援から考えていきましょう。日常生活で支援できそうなことがあれば
 最初にその人に何をして欲しいかを尋ねると良いでしょう。
 支援の方法はいろいろあります。例えば、その人の必要なものを調達すること
 安否確認を手伝うこと、子どもの面倒を見ること、何かの手続きをする時に
 一緒に付き添うこと、物を修理すること、などがあります。
 現在の被災者のニーズに沿うことは、たとえそれが物質的な支援であったとしても
 心のケアにつながっています。

・支援活動に参加した自分の思いを、現地のニーズに合わせて修正することが
 必要な場合もあります。
 被災地では、自分の思ったような活動ができないことが多いのが現状です。

・自分が短期間しか支援できないことを認識しましょう。そして被災者の多くは
 心に踏み込まれることに抵抗があるということを知っておきましょう。
 その人が話をしたくない時は、そっと見守りましょう。

・中には、感情を人に見せることを好まない人や
 ひとりの時にしか泣けない人がいます。泣いていないからといって、
 その人が悲しんでいないということではないことを、心にとめておいて下さい。

・「これからどんな風に生きていけば・・」と言われることがあるかもしれません。
 その言葉が出たとしても、あなたにその答えを求めているわけではありません。
 ただそばにいて話を聞くことが、大きな助けになります。

・被災者のプライベートな話題を聴くこともあると思いますが、
 他の被災者や支援者と共有した方が良い情報と、プライバシーの
 保護をするべき情報を、きちんと分けて扱うように、十分な注意を払いましょう。
 信頼関係を築くことが支援の第一歩です。

・少し時間がたつと、怒りや不満の感情をまわりにぶつけることがあります。
 たとえ支援者に対しての言動であっても、支援者を責めているのではありません。
 悲しみや行き場のないつらさが、怒りとなって表れているのだと考えてください。
 これらの感情への対応は専門家でも非常に難しいですが、
 できるだけ非難や否定をせずに感情を受けとめましょう。
 その後で、実際に困っていることを聴いてください。

・ひとりきりになりやすい被災者の人(子ども)には、できるだけ声をかけて下さい。

・子どもは元気そうにしていても、自分の気持ちを、親や周囲の人に
 話せずにいる場合があります。できるだけ日常生活に近い安全な状態になるように
 配慮しながら、注意深く見守りましょう。

・子どもには、わかりやすい言葉で話して下さい。また、大人ばかりが話さず、
 子どもが話せるように待って下さい。多く話す必要はありませんが、
 子どもたちのニーズを探ることも重要です。

・たとえどんなに厳しい現実であったとしても、子どもに決してうそを
 つかないで下さい。説明するときは、子どもの年齢に合わせた言葉を使い、
 必要以上に怖がらせないようにしましょう。

・子どもの支援には、その子どもをもつ親への支援が大切です。
 親が安心して休める場を提供し、親の不安を和らげることが、
 子どもの支援につながります。

・まずは自分の心身の安全を確保できる事が、支援者として最も重要なことです。
 そして、支援者自身の過労や燃え尽きに十分に注意して下さい。
 被災地での活動は、支援したいという気持ちや精神的緊張から、
 過剰に活動してしまいやすい環境にあります。
 また、心に傷をもつ人たちのサポートは、
 強い疲労感や無力感を引き起こすことを覚えておき、
 自分で休息をとるように配慮して下さい。

参考資料:
ビリーブメントケアCruseサイト(英国)
兵庫県こころのケアセンター サイコロジカルファーストエイド実施の手引き

作成:
Japan Tsunami Grief Support Project (JTGSプロジェクト)
瀬藤乃理子さん(甲南女子大学)、米虫圭子さん(京都産業大学)
黒川雅代子さん(龍谷大学短期大学部)、井上ウィマラさん(高野山大学)

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