折しも、母の90歳の誕生日の夜、
舞妓さんから芸妓さんへの襟替え前にのみ踊られる
「黒髪」を拝見しました。
京都通の友人のお座敷にお招きいただき、
お相伴する機会を授かったのです。
サープライズで上七軒の中里さんへ連れていくと、
敷居もまたがずに「ここで帰る」と立ちすくむ母。
友人たちが手伝ってくれて、やっとやっとや~っと、
二階のお座敷へ。
そんな母も、尚絹さんの黒髪の踊りに緊張を洗われたのか、
くつろいだ表情になりました。
「冥途の土産にお座敷にあがれた」と、
帰宅してからも大喜びが続いています。
尚絹さんの踊りは可憐で、
尚ひろおねえさんの唄と三味線は見事でした。
花簪をあどけなく揺らしながら、
甲斐甲斐しくもてなしてくれた新人舞妓の尚舞ちゃんも
やがて、おねえさん舞妓さんになって、
黒髪を踊る日がくるのですね。
三年後? 五年後?
まだまだ元気でいてくれるはずの母と一緒に、
ぜひ見せていただきたいな!
お母さん、あなたがいるから、私は強く生きます。
そして、私がいるから、あなたは安らかに生きてください。