2011年度名古屋三田会 春の集いが本日4/13(水)
18:30~ ヒルトン名古屋ホテルにおいて開催されました。

名古屋三田会は名古屋圏の慶應義塾大学卒業生の同窓会で
毎年4月頃、塾に関連する講師を招いて講演会を開き
その後に、懇親を深める立食パーティを行っています。

今年度は、担当幹事を仰せつかったものの、直前まで
仰せつかったことをすっかり忘れていて、冷や汗をかきかき駆けつけ
後輩たちに交じって、受付のお手伝いをいたしました。

それはさておき…

今年度の講演会講師は、母校の大学院 SDM学科教授で
外交ジャーナリスト・作家の手嶋龍一さんでした。

手嶋さんは元NHKワシントン支局長で、9・11同時多発テロ事件では
11日間にわたる24時間連続放送を担い、冷静で的確な分析によって
視聴者の心を鷲づかみしたジャーナリストです。

演題は『東アジアの時代とニッポンの針路 福澤諭吉「脱亜入欧論」再考』
の、はずだったのですが…。

「冷静沈着な民衆とパニック寸前の政治指導部」と称して
福島第一原発事故に対する政治指導者の対応の欠陥を語られるうちに
憤懣やるかたなくならなれたのか、脱亜入欧論には辿りつかずに講演は終了。

用意されたパワーポイントのシートは、40枚を越えていたとか…。
私の記憶では、18枚ほどを映写したところで終わられたと思います。

脱亜入欧論のお話は、伺えなかったものの
プロでもこんなことがあるのね、とほほ笑ましく感じたのと
プロの視点の迫力と内容には、たいへん感服をいたしました。

もっとも、後に手嶋さんの公式サイトを拝見したところ、内容については
情報誌「FACTA」の阿部重夫編集主幹との3回にわたる「福島原発対論」
講演での情報提供のベースになっていたようなので
勉強をされている方にはすでに、ご存じのコンテンツだったかもしれません。

とはいえ、手嶋さんは名古屋三田会会員に地元財界はじめ
名古屋のビジネスリーダーが多々、混じることを配慮されたのでしょうか。

「手嶋龍一×阿部重夫「福島原発」対論(上・中・下)」の話題の中でも
第1原発のクライシスをめぐる、政治指導者の対応と在り様を取りあげられ
手嶋龍一流リーダー論をナマで伺えたのは、思いがけない収穫でした。

というのも、今年度の当社では、リーダー、指導者の育成に力を注いでいます。

たとえば、来月5/21(土)には「高野なごや塾」を開講して
心のスイッチをいれる、リーダーの在り様を語り合う予定です。

高野 登(弊社プロ講師養成スクール ス―パーヴァイザー)は2009年
ホスピタリティの殿堂 リッツ・カールトン・ホテルの日本支社長を辞して
長野市長に立候補して現職に僅差にせまった男です。念のため。

そんなわけで、リーダーとは何か、リーダーはどうあるべきかという命題は
いまの私にとって、脱亜入欧以上の関心事といえるのです。

さて、ご存じのとおり、手嶋さんのテーマは「インテリジェンス」です。

春の集い講演会においても、インテリジェンスについての解説があり
インテリジェンス・サイクルを回すことの重要性を説かれました。

釈迦に説法かと思いますが、手嶋さんによる「インテリジェンス」とは…
「一般情報(インフォメーション)から、貴重な情報の原石を選り抜き
その真贋を確かめ、周到な分析を加えて、情報が意味する全体像を描き出す。
トップリーダーが決断するにあたって、役立つ精査された情報」のことです。

「テムズ河にある膨大な石ころのなかにも、他とは違う輝きを放つ石がある。
それを選り抜いて、分析し、ガラス玉かダイヤモンドの原石かをみきわめること」

これは、手嶋さんのベストセラー小説ウルトラ・ダラーで主人公である
諜報員 スティーブン・ブラッドレーが「インテリジェンスとは何を意味するのか」
と、問うた時の師 プロフェッサー・グリーンの言葉です。
ウルトラ・ダラー

手嶋さんは、日本語ではインテリジェンスもインフォメーションも「情報」と訳され
「これが大きな混乱のもと」と述べられ、大きくうなづいてしまいました。

加えて、インフォメーションを収集した人の認知(受け止め方)が加わり
下手をすれば、インフォメーションがフィクションになっていくことも多いですね。

元の職場に在籍していた時、学会で何回か、立て続けに発表を行ったら
「犬塚さんは、大学の先生になるつもりらしい」という噂が広がりました。

その時、私は大学の教員になるつもりはさらさらなく、驚きました。

フィクションが噂として広がり、流言蜚語にならないよう
有事でなくても、日常生活においても気をつけたいものです。

さて、「インテリジェンス・サイクル」とは…
リーダー(決断をゆだねられた者)が関心を部下に伝えることで
部下がインフォメーションを収集し、選別してインテリジェンスへと高め
その意味を読み取って、簡潔な報告書を上げる様になるサイクルのこと。

【(一般情報の)収集】→【選別・精査】→【分析・報告書とりまとめ】
→【決断を委ねられし者】というサイクルとのことです。

手嶋さんは2010年11月、APEC首脳会議を前に
北海道新聞で、次のように語られています。

「政府内の組織が、膨大な一般情報から
政治リーダーが決断に必要なインテリジェンスを選り抜いて提供する。
こうしたインテリジェンス・サイクルはどんな国家でも機能しているが
いまの菅内閣にはそうしたサイクルが存在しているのかすら疑わしい」

また、2010年2月18日の産経新聞ではすでに
当時の鳩山内閣について、次のように語られています。

「本来、政権の中にはインテリジェンスサイクルというものがなければいけません。
総理や官房長官は、外交や政策判断に必要な高度な情報を(現場に)求め
集約された情報をさらに精査し、判断材料にしていくことが求められます。
しかし今、鳩山(由紀夫)内閣の中でこのサイクルが回っているかといえば
その存在すら疑わしいといわざるをえない」

こうしたインテリジェンス・サイクルをもたない政治指導者たちが
3.11大震災により福島第一原発の事故が起こって以来
たびたび口走っているのは、「想定を超える…」ですね。

これについて、手嶋さんが春の集い講演会で語られたことを
「福島原発対論」を引用して紹介すると、次のとおりです。

「大災害や戦争には想定外の出来事は避けられない。

~想像すらできない事態を想定して備えておけ~

これは「核の時代の語り部」といわれた、アルバート・ウォルスタッター博士が
若い戦略家たちに言い聞かせていた有名な言葉です。

今度の大震災でも、原子力の専門家が想定していた規模を遥かに超える災厄が
現実のものになった段階で、緊急の指揮・命令系統を首相官邸に設置すべきでした」

しかしながら、菅総理、菅内閣の迷走は増すばかりです。

 手嶋さんは「想像すらできない事態」をブラック・スワンと呼び
これについても語られましたので、この続きは、改めて…。

「手嶋龍一流リーダーの条件(下)」へ続く

Tags: , , , , , , ,

2 Responses to “手嶋龍一流リーダーの条件(上)~インテリジェンスなき政治指導者たち~”

  1. […] たちの 特にリスク・マネジメントにおける、機能不全を指摘されてきました。 ※インテリジェンス・サイクルなき政治指導者については  4/13記事「手嶋龍一流リーダーの条件(上)」から […]

トラックバックURL

コメント

コメント欄では次のタグが使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>